もう仕事はしたくない。

思い出の場所で、自分の本性に気づいて思わず「もう会社には出ない。連絡は自分がしておくから」と言ってしまった。私は、本当は技術者なんかじゃなかったんだ。ただの田舎の、涙ぐましいような給料で働き、あまり賢いことも考えず生き、貯金やその週の健康番組の教えを守ることが何より将来のためだと疑わず信じる、そういう「頭の悪い」女の子だったんだ。可愛くなるために全力を尽くすような「頭の悪い」ではない。何も疑わず、何も改めず、ぼんやりと生きるポリシーのない頭の悪さだ。
そして「マチ」やTVで見る都会にただあこがれているだけで、外にも出ないような、まるで朽ちたような田舎ものだったのだと。
年ひとけたにしてすでに暗かった日常の中で、数少ない思い出になっている場所。けど、近所に店なんてさびれたショッピングセンターと豆腐のお店と散髪屋さんぐらいだった。とてもchaosには耐えられない場所であることもわかっていた。そこが好きなのは「懐かしい田舎」として好きなんだとずっとわかった気でいた。
葬式に集まって、一族同士で話をする親類。しかも、内容も不謹慎なもの。あぁ田舎のDQNだと思っていた。だから、自分はこの一族とは全く毛色の違う人間だし、当然そうなるべく努力しなきゃと思っていた。
けど、自分はその器ではなかった。やっぱり遺伝子は強かった。
…ずっと、なぜ辛いのかわからなかった。気質は戦う側なのに能力が足りずあえいでいるのかとずっと思っていた。けど、本当は、まったくもって向かなかったんだ。

次の日にでも辞表を提出して、あの故郷で市役所の事務員でもやって、ほそぼそと暮らそう。今までのことは、InstallShieldやVC++は、夢だったと思って懐かしもう。
いや、自分で辞めなくても、1月にはもうだめなんだろうけど。